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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「む、いいつけた使いの首尾はどうだった」
「こちらは、殿さまごじしんで、早くからきて、あれに待っています。そして伊那丸は?」
「ふんじばってつれてきた、じゃおれは、梅雪とかけあいをつけるから、きさまが縄尻を持っていろ。なかなか童のくせに強力だから、ゆだんをして逃がすなよ」
龍巻は二、三十人の手下をつれて、梅雪のいる拝殿の前へおしていった。
縄尻をうけた民蔵は、
「やいッ、歩かねえか」わざと声をあららげて、伊那丸の背中をつく。――その心のうちでは、手をあわせている小幡民部であった。
しばらくのあいだ、龍巻と談合していた梅雪は、伊那丸の面体を、しかと見さだめたうえで、約束の褒美をわたそうといった。龍巻も心得て、うしろへ怒鳴った。
「民蔵、その童をここへひいてこい」
「へい」
民蔵は縄目にかけた伊那丸を、梅雪入道の前へひきすえた。拝殿の上から、とくと、見届けた梅雪は、大きくうなずいて、
「でかしおッた。武田伊那丸にそういない」
その時、むッくり首をあげた伊那丸は、穴山のすがたを、かッとにらみつけて、血を吐くような声でいった。
「人でなしの梅雪入道!」
「な、なにッ」
「お祖父さま(信玄)の時代より、武田家の禄を食みながら、徳川軍へ内通したばかりか、甲府攻めの手引きして、主家にあだなした犬侍。