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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

泣き饅頭

一

一

予言は、よき未来の暗示であり、いましめの謎である。かならずしも、文字の表にあらわれている意味ばかりが真なのではない。その裏の意味もふかく味読してみねばならぬ。

父子の邂逅はむなしく

小太郎山の砦はあやうし

孤岩の上に――こう彫りのこした果心居士の心は、どう解いたらいいであろうか?

伊那丸をはじめ、忍剣も龍太郎も、また竹童も、ひとしく松明の燃えつきるのを忘れて、岩上の文字をみつめ予言の意味をときなやんでしまった。

これを、読んで文字のごとく考えれば、

(伊那丸よ――おまえのいま望んでいることは無益であるぞ、徒労であるぞ、幻滅をもとめているにすぎないぞよ、そして、そんなことをしているまに、留守の小太郎山の砦は、徳川家康におそわれて、あの裾野の陣の終局をむすばれてしまうぞよ――)

思うてみるさえ、おそろしい声がきこえる。

だが、まさかそんなことはあるまい!

伊那丸は心のそこで、否定した。

これは老先生の激励であろう。いまが大事なときであるぞと、凡夫のわれわれを鼓舞してくださる垂訓なのであろう。すなわち、予言の裏にふくむ真意をくめば、

――ここに最善のつとめをなさねば汝と父勝頼との、父子のめぐり会うのぞみはついにむなしいぞ。