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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

白樺に笛吹く少女

一

「ウーム……」

と、燕作はおもわずうなって、

「いよいよ伊那丸のやつばらが、呂宋兵衛さまのあとをかぎつけてきやがったな。オオ、すこしも早くこのことを、法師野へ知らせなくっちゃならねえ」

ひらりと、屋根をとびおりた燕作、この大事に驚愕して、いまはひとりの竹童をかえり見ている暇もなく、得意の早足一もくさん、いずこともなくすッ飛んでった。

白樺に笛吹く少女

一

駈けもかけたり早足の燕作。

水車小屋から法師野まで、二里八、九丁はたっぷりな道、暗夜悪路をものともせず、ひととび、五、六尺ずつ踵をけって、たちまち大庄屋狛家の土塀門のうちへ、息もつかずに走りこんだ。

きて見ると、こなたは意外、いやのんきしごくなていたらく。

呂宋兵衛以下、野獣のごとき残党輩。竹童のあげた狼煙も、伊那丸軍の出動も知らず、みなゆだんしきッた酒宴の歓楽最中。なかにはすでに酔いつぶれて、正体のない野武士さえある。

息はずませて、門から奥をのぞきこんだ燕作、

「ケッ、ばかにしていやがら」

と、むッとして、

「おれひとりを、番小屋に張りこませておきゃあがって、てんでに、すきかってなまねをしていやがる。