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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
菊池半助がその縄取りのうしろから、おごそかに口をむすんでくる。
「ごくろうでした」
「そこもとにも」
と、伴天連と半助は、こう会釈をして、すぐに刑吏へさしずして、死座をつくらせ、血だまりの穴をほらせ、水柄杓をはこばせる。
あなたには奉行、検視の役人などが、床几をすえて、いそがしくはたらく下人たちのようすをながめ、ときどき、なにか下役へ注意をあたえている。
かけやを持ったひとりの男は、やがて、三ツの死のむしろのそばへ、三本の杭をコーン、コーンと打ちこんだ。
「それッ」と、菊池半助が、時刻をはかって目くばせする。
「武田伊那丸ッ、立て!」
まっ先の杭へ、あらあらしく引きずってきて、ギリギリ巻きにいましめの端をからめつけた。
むしろの上にすえられた姿は、悄然と、うつ向いていた。さすがな家康も、その身分を思ってか、衣服は着けたままの白綸子、あきらかに、武田菱の紋がみえて、前髪だちのすがたとともに、心なき群集の眼にも、あわれに、いたいたしい涙をもよおさせる。
さらに、ひどかったのは、つぎの、法師すがたのものと、白衣の人をあつかった刑吏の待遇である。打つ、蹴る、あげくの果てに、伊那丸と同じように引きすえて、何か、口あらくののしりちらした。