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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
すると、あなたから加勢にきた四天王の足助主水正。
「えい、これしきの敵にひまどることがあろうか」
大身の槍に行き足つけて、伊那丸の真正面へ、タタタタタッ、とばかりくりだした。
伊那丸の身は、その槍先に田楽刺しと思われたが、さッとかわしたせつな、槍は伊那丸の胸をかすって流るること四、五尺。
「あッ」
片足を宙にあげてのめりこんだ主水正、しまッたと槍をくりもどしたが、時すでに、ズンとおりた伊那丸の太刀に千段を切りおとされて、無念、手にのこったのは穂をうしなった半分の柄ばかり。
「やッ」
捨鉢に柄を投げつけた。そして陣刀をぬきはらったが、たびたびの血戦になれた伊那丸は、とっさに咲耶子と力をあわせ、いっぽうの雑兵をきりちらして、湖畔のほうへ疾風のようにかけだした。
二
そこには、白旗の宮のまえから、追いつ追われつしてきた小幡民部が、穴山の旗本雑兵を八面にうけて、今や必死に斬りむすんでいる。
しかし、小幡民部は、こうした斬合はごく不得手であった。太刀をもって人にあたることは、かれのよくすることではない。
けれど、軍配をもって陣頭に立てば、孫呉のおもかげをみるごとくであり、帷幕に計略をめぐらせば、孔明も三舎を避ける小幡民部が、太刀打ちが下手だからといっても、けっしてなんの恥ではない。