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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

三

はやくも、一の洞門に鬨の声があがる。

まッ先に攻めつけてきたのは武田伊那丸であった。要所のあんないは咲耶子。すぐあとから、加賀見忍剣と木隠龍太郎のふたりが、右翼左翼の力をあわせて、おのおの二十人ほどひきつれ、えいや、えいや、洞門の前へおしよせてきた。

いっぽう――人穴から、どッと流れおちている水門口へかかった巽小文治は、槍ぞろい十五名の部下をつれて、水門をぶちこわそうとしたが、頭の上へガラガラと岩や大木を投げつけてくるのに悩まされた。のみならず、水門には、頑丈な鉄柵が二重になっているうえ、足場のわるい狭隘な谿谷である。おまけに、全身水しぶきをあびての苦戦は一通りでない。

うら山の嶮にのぼって、殿堂へ矢を射こもうとした山県蔦之助以下の弓組も、とちゅう、おもわぬ道ふさぎの柵にはばめられたり、八方わかれの謎道にまよわされたりして、やっとたどりついたが、はやくもそれと知った丹羽昌仙が、望楼のうえから南蛮銃の筒口をそろえて、はげしく火蓋を切ってきた。

丹羽昌仙の北条流の軍配と、二千の野武士と、この天嶮無双な砦によった人穴の賊徒らは、こうしてビクともしなかった。