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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

と、龍太郎もうなずいて、他の者の同意をたしかめたうえ、けつぜんと、徳川がたの使者にこたえた。

「ご提示の定書、いかにも承知いたした」

使者は一礼して、

「さっそくのご承引かたじけなくぞんじます」

と、いったが、いまの書きつけをさしだして、

「では、この試合の部門に、なにびとがなんの立合いにご出場になるか、流名とご姓名とを、正直にお書き入れねがいとうござる」

「あいや、われらもとより浪々無住のともがらである。名のるほどの姓名流名を持ち合わせておらぬ者ゆえ、さいぜん申したとおり、文殊とでも大日菩薩とでも、いいようにお書き入れください」

「大講会の規として、そうはまいりませぬ。ご本名をお認めなきうちは、これを諸侯の控え所へ伝令することもならず、ご奉行としても、役儀がら試合を命じるわけにもゆきませぬ」

「どうしよう、忍剣」

と、龍太郎は、また一方へ相談を向けた。

「そうだな、われわれはどうなっても、いっこう仔細はないが、まんいち若君にごめいわくがかかってはならぬし……」

「しかし、大講会三日のあいだは、血を見ることをゆるさぬ誓いがある。かまわぬから本名を記してやろうじゃないか。