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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
「はてな?」小首をかしげた忠勝は、主人家康と面談をすましてから、とものなかにいる菊池半助という者をひそかによんだ。そしてなにかささやくと、半助はまたどこかへか立ち去った。
この菊池半助も、前身は伊賀の野武士であったが、わけあって徳川家に見いだされ、いまでは忍術組の組頭をつとめている。いわゆる、徳川時代の名物、伊賀者の元祖は、この菊池半助と、柘植半之丞、服部小源太の三羽烏。そのひとりである半助が、忍術に長けているのはあたりまえ、あらためてここにいう要がない。したがって偽鳥刺しの可児才蔵の後をつけ、落ちつく先の行動を見とどけるくらいな芸当は、まったく朝飯前の仕事だった。
三
ピキ ピッピキ トッピキピ
おなかがへッて北山だ
芋でもほッて食うべえか
芋泥棒にゃなりたくない
鳶を捕ッて食うべえか
ヒョロヒョロ泣かれちゃ喰べかねる
そんなら雪でも食ッておけ
富士の山でもかじりてえ
ピキ ピッピキ トッピキピ
だれだろう? そも何者だろう? こんなでたらめなまずい歌を、おくめんもなく、大声でどなってくるものは。
この村には、家はならんでいるが、ほとんど人間はいなくなっているはず。