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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

深夜の珍客

一

そして、ふと衣の上に、霜のように立つものを手でさぐってみて、

「こりゃ! 針だッ」

と叫んだ。

「えッ、針?」

その時、はじめてふたりとも身がまえ直して、じッとやみをすかして見ると、白髪をさかだてたひとりの老婆が蜘蛛のように岩肌に身を貼りつけて、プップップッとたえまなく、ふたりの面へ吹きつけてくる針の息……

おお、それこそ竹童がなやまされた蚕婆の秘術吹針の目つぶしだった。

深夜の珍客

一

早足の燕作と可児才蔵は、蚕婆より一足先に抜け穴へはいったので、すぐあとにおこった異変もなにも知らず、ただひた走りに、地下三十三町の間道を人穴城へいそいでいく。

目というものがあっても、ここでは、目がなんの役にも立たない暗黒界、けれど、足もとは坦々とたいらであるし、両側は岩壁の横道なし。――いくら盲めっぽうに進んでも、けっして、迷う気づかいはないと、燕作はいつもの早足ぐせで、才蔵よりまえにタッタとかけていったが、やがてのこと、

「ホイ! しまったり!」

目から火でもだしたような声で、勢いよく四ンばいにつんのめった。あとからきた才蔵も、あやうくその上へ折りかさなるところを踏みとどまって、