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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

そのあとは、卜斎も寝入り、細工小屋の槌音もやんでシーンと真夜中の静けさにかえったが、半助だけは、うすい蒲団をかぶって横になりながらも、まだ寝もやらず目をパチパチとさせていた。

「鷲、鷲! 竹童というやつが、自由自在につかう飛行の大鷲! おお、そいつを一つ巻きあげて、こんどの手柄としてかえろう……」

とかれは、ふと思いついた胸中の奇策に、ニタリと悦をもらしたが、そのとき、なんの気なしに天井を見あげるや否、かれは、全身の血を氷のごとく冷たくして、

「や、や、やッ」と、目をむいて、ふるえあがった。

三

菊池半助が、身をすくませたのも道理、中二階の天井には、いちめんの鉄板が張ってあって、それに、氷柱のような、無数の鏃が植えてあるのだ。

剣の切ッ先よりするどい鏃は、ちょうど、あおむけになっている半助の真上に、ドギドギとぶきみな光をならべている。おお、もしその鉄板が、いちどおちてこようものなら、いかに隠身自由、怪力無双なものでも、五体は蜂の巣となって圧死してしまうであろう。

「釣り天井――」

半助は、とっさに壁ぎわへ、身をすりよせた。

このおそろしい部屋へじぶんをあんないしたからには鼻かけ卜斎の八風斎は、すでに徳川家の伊賀衆菊池半助ということを見破ったにそういない――と半助は、こころみに梯子口をのぞいてみると、はたしていつのまにか