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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

お小姓とんぼ組

一

つぶって、覚悟をしろ、逃げようとしても、それは無駄だぞ――と、おそろしい威迫の目をもって、胴田貫の大刀を面前にふりかぶった。

「――ジッとしていろ! ジッとしていろ。痛くないように斬ってやる!」

卜斎の足の拇指が、蝮のように、ジリジリと畳をかんでつめよってくるのに、なんで、鞍馬の竹童、ジッと、その死剣を待っていられるものか。そんな無意義な殺刀にあまんじる理由があろうか。

といって、身をまもる唯一の愛刀、般若丸はそのまえに、卜斎の足蹴にはねとばされて、拾いとって立つ間はない。しかも、寸秒の危機は目前、おもわず、額や腋の下から、つめたい脂汗をしぼって、ハッと、ときめきの息を一つ吐いたが――その絶体絶命のとっさ、ふと、指さきに触れたのは、さっき、菊村宮内からもらって、ふところに入れていた、希代な火独楽! その火独楽だ。

二

宵に、神官の菊村宮内が竹童と蛾次郎をならべておいて、蛾次郎には青い水独楽をあたえ、竹童にはあかい火独楽をくれて――その時ふたりにいったことには、これは、竹生島の弁天に、歳久しく伝わっている奇蹟の独楽だといった。

宮内は、この独楽をもって、仲のわるい二童子の手をむすぼうとしたのである。