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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
この松明こそは、竹童が苦心さんたんして、蛾次郎から手にいれたものである。かれは、この松明、二十本をなんに使うつもりか、腰に皮の火打石袋をぶらさげ、いっさんに、白旗の森のおくへ走りこんでいった。
二
そこは密林のおくであったが、地盤の岩石が露出しているため、一町四方ほど樹木がなく、平地は硯のような黒石、裂け目くぼみは、いくすじにもわかれた、水が潺湲としてながれていた。
ギャアギャアギャア
――ふしぎな怪物の啼き声がする。そして、すさまじい羽ばたきがそこで聞えた。見ると、ひとつの岩頭に金瞳黒毛の大鷲が、威風あたりをはらい、八方を睥睨してとまっている。
いうまでもない、クロである。
むろん、足はなにかで岩の根っこへしばりつけてあるらしかった。
「やい、もひとつ啼け、もひとつ啼いてみろ」
七尺ばかりはなれて、鷲とあいむきに、腰かけていた者はれいの蛾次郎、竹の先ッぽに、兎の肉をつき刺して、しきりにクロを馴らそうとしていた。
「おい、蛾次公、なにをしてるんだい」
「え」
ふいに肩をたたかれて、蛾次郎がひょいと、うしろを見ると、竹童が、松明を薪のようにしょって立っている。