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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

クロをそこへ止らせておいて、竹童は、残りの松明を背負って、スルスルと望楼台へ下りてきた。もうそこにはだれもいない、呂宋兵衛も昌仙も才蔵も、下のさわぎにおどろいて降りていったものと見える。

「しめた」

竹童は、五つ六つある階段を、むちゅうでかけおりた。

そこは、七門の扉にかためられている人穴城のなかだ。あっちこっちの小火をけすそうどうにまぎれて、さしもきびしい城内ではあるが、ここに、天からふったひとりの怪童ありとは、夢にも気のつく者はなかった。

三

果心居士の命をおびて、いつかここに使いしたことのある竹童は、そのとき、だいぶ、ようすをさぐっておいたので、城内のかっても、心得ぬいている。

おそろしい、はしッこさで、かれがねらってきたのは鉄砲火薬をつめこんである一棟だった。見ると、戦時なので、煙硝箱も、つみだしてあるし、庫の戸も、観音びらきに開いている。しかも願ったりかなったり、いまのさわぎで、武器番の手下も、あたりにいなかった。

ちょこちょこと、庫のなかへはいった竹童は、れいの松明に、火をつけて、まン中におき、藁縄の綱火が火をさそうとともに、このなかの煙硝箱が、いちじに爆発するようにしかけた。