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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
呂宋兵衛の奥の手
一
寂光浄土の極楽へ、地獄の獄卒どもが練ってきたように、それは殺風景なものであった。
きょう、桑名の陣をさして、天ヶ丘をくだってきた、和田呂宋兵衛の一行である。れいの鎖駕籠をいと厳重に警固して、随行には軍師の昌仙、早足の燕作、吹針の蚕婆、そのほか五十余名の浪人が、鳴り物こそ使わないが、いわゆる一鼓六足の陣あゆみで、ピタッ、ピタッ、ピタッ、ピタッ……と、足なみをそろえてくる。
せんとうに立ったのは三人の野武士である。さえぎるものあらばと、刀の柄に手をかけたまま歩いてくる。次には、黒柄九尺の槍を横にもち、するどい穂先をならべてくる者が七人。――そのつぎに、和田呂宋兵衛、黒衣に蛮刀を佩き、いかにも意気ようようとしていた。
追分へでたら、左だぞ、左だぞ。すこしは道がまわりになっても、なるべく裏街道をえらんでいけよ。――途中、ほかの大名にあったらば、同格の会釈をして、かまわないから、羽柴筑前守のみ内と名のれ――関所へかかったときは、武器を伏せろよ! いいか、関所で武器をふせるのを忘れるなよ! そのほか、桑名のご陣につくまでは、みちみち話をかわすことはならぬ。
列の前後へむかって、こう号令したが、令をくだす自分だけは軍律もなにもなく、黒布のかくしぶくろから陶器製のパイプを出し、それへ、葉煙草をつめたかと思うと、歩きながら