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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
廂の上へぬけでるかくし階段をさがす者、欄間に足をかけて釣龕燈の鎖をつかみ、三太郎猿のよくやる離れわざの亜流をこころみて、屋根の上へはいあがろうとする者――咲耶子と余一とは、いったいどこから屋根上へのぼったのか血気な若侍にしてもふしぎなくらい、この一番乗りは骨が折れたが、あとになって心得のある者に聞くと、すべてこういう楼閣には、修築手入れなどの場合の用意に、工匠が上下する足がかりが棟のコマ詰から角垂木の間にかくしてあるもので、みんな上へ上へと気ばかりあせっていたので、その工匠口にはすこしも気がつかなかった。
しかし――一せいにとはゆかないが、どうやらこうやら、ほど経て、上に登ることは登りついた。そしてはじめて、ようすいかに――と坂になった屋根の端から首をだして打ちあおいで見ると、
「わアん、わアん……わ――ん……」
浜松城のお使者番は、満天の星にくるまれた閣の尖端、擬宝珠のそばで、手放しに大声あげて泣いていた。
「あれッ?」
伊部熊蔵はあっけにとられた。
まさか浜松城の来使星川余一なるものが、十三、四の子供だとは考えていなかったので。
立っては歩かれないくらい、勾配のきゅうな青銅瓦の上をのしのしと無器用にはいあがって、