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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

五

「よくも、おいらをさんざん悩めやがったなッ」

いきなり腰の棒切れを抜いてふりかぶり、蚕婆の肩をピシリと打っていったせつな、あら奇怪、身をかわした婆の口から、ピラピラピラピラピラピラピラ糸のような細い光線となって、竹童の面へ吹きつけてきた含み針!

これこそ、剣、槍、薙刀の武術のほかのかくし技、吹針の術ということを、竹童も、話には聞いていたが、であったのは、きょうがはじめてである。

「その時に、目に気をつけろ、敵の目をとるのが吹針の極意」と、かねて聞いていたので、竹童はハッとして、とっさに顔をそむけて飛びのいた。

五

その時だった。

竹童と蚕婆の問答をよそに土べっついの火にむかって煙草をくゆらしていた脚絆わらじの男が、ふいに戸外へ飛びだしてきた。

男は、やにわに、竹童の首ッ玉へ、うしろから太腕を引っかけて、かんぬきしばりに、しばりあげた。

「鞍馬山の小僧、いいところであった!」

「くッ、くッ……」

竹童はのどをひッかけられて声がでない。顔ばかりをまッ赤にし、喉首の手を、むちゃくちゃにひッかいた。

「ちッ、畜生。きょうばかりはのがしゃしねえ」

「だれだいッ、くッくくくくるしい」