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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

「やッ、てめえは鞍馬の竹童だな」

「オオ竹童だが、どうした」

「狼煙をあげて、伊那丸方へ合図をするなんて、なりにもにあわぬふてえやつ。きょうこそ呂宋兵衛さまのところへ引っつるすからかくごをしろ」

「だれがくそ!」

「ちぇッ。この餓鬼め」

「なにをッ、この大人め」

組んずほぐれつ、たちまち大小二つの体が、もみ合った。――赤土がとぶ、草が飛ぶ。それが火花のように見える。

さきに、釜無川原でぶつかった時、燕作の早足と腕まえを知った竹童は、もう逃げては、やぼとおもったか、いきなりかれの手首へかじりついた。

「あ痛ッ! ちくしょうッ」

燕作は拳をかためて、イヤというほど、竹童のびんたをなぐる。しかし竹童も、必死に食いさがって、はなれればこそ。

「ウム」と唇から血をたらして同体に組みたおれた。そしてややしばらく芋虫のように転々として上になり、下になりしていたが、ついに踏ンまたいでねじふせた燕作が、右の拇指で、グイと対手の喉をついたので、あわれや竹童、喉三寸のいきの根をたたれて、

「ウーム……」

と、四肢をぶるるとふるわせたまま、ついに、ぐったりしてしまった。

「ざまア見やがれ! がらの小せえわりに、ぞんがいほねを折らせやがった」