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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

紅白の鞠盗み

一

「これへ」と、さしまねいた親切な武士。

忍剣、龍太郎、小文治、蔦之助、竹童の五人は、時にとって炎暑をしのぐ一樹の蔭ともありがたく思いながら、

「ご芳志にあまえて、しばらくのあいだ、幕の一ぐうを拝借つかまつります」

しずかにくぐってなかへ通り、隅にのべてあるむしろの上へ、めいめいつつましくすわりこんだ。

すると、そこにまっ赤な顔をして、ゆうゆうと酒を飲んでいた豪放らしい侍がある。一同をながめると、莞爾として迎えながら、

「失礼だが、お祝いに、一献まいろう」

と、忍剣へ茶碗を持たせて、酒の入っているらしい壺を取りあげた。

「や、これはかたじけないが、じぶんは見らるるとおり僧形の身、幼少から酒の味を知ったことがない、兄貴、かわってくれ」

と、龍太郎へ茶碗をゆずると、龍太郎もあやまって、

「武術に酒気のあるのは禁物ということ、未熟者にとってはことにだいじな試合、もし不覚があってはもの笑いのたねとも相なるから、まず、お志だけをうけて、お祝いはあとでちょうだいいたす」

と、当りさわりなくいって、茶碗を返した。

「あはははは、なるほど、まだ前祝いは少し早いな、では後祝いにいたして、じぶんがご一同に代り、まず幸さきを祝福しておく」