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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

全能全力を正当につくしてみて、それでも敗れれば、まことに是非のないわけだ。男らしく、一党の人の前へでて、罪を謝するよりほかにみちはない。

と、覚悟をきめてしまったので、かれもぞんがい元気をたもっていた。

そこで、しずかに、持ちかえる矢をさがすと、蔦之助の矢は見あたらないで、大鳥居の額縁に刺さっている加賀爪伝内の矢が目にとまった。

かれはハタととうわくして、

「どうしてあれを取ろうか」

と腕をくんで考えた。

一ぽうを見ると、そこにすばらしく大きい椋の大木がある。その高い梢の一端がちょうど、鳥居の横木にかかっているので、

「そうだ」

駆け寄ってそれへよじのぼろうとすると、

「小文治、小文治」

不意に、どこかで自分を呼ぶものがある。

――が、どこを見まわしても、人らしいかげはあたりの鬱蒼にも見えないのである。

「耳のせいか?」

かれはそう思った。ふたたび椋の幹に抱きついて、大鳥居の横木へわたろうと考えた。

「――いまわしが降りてゆくから、くるにはおよばんよ、そこで待っているがいい」

「や? ……」

耳のせいではない。

だれだろう、何者だろう、この白鳥の峰でなれなれしく話しかける人間は?