轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

六

けれど、鎖網をかけた、駕籠のなかなる伊那丸の目には、なつかしい富士のすがたも見えなければ、富士川の流れも、枯れすすきの波も見えない。

ただ耳にふれてくるものは、蕭々と鳴る秋風のおと、寥々とすだく虫の音があるばかり。

すると、どこでするのか、だれのすさびか、秋にふさわしい笛の音がする。その妙な音色は、ふと伊那丸の心のそこへまで沁みとおってきた。――かれは、まッ暗な駕籠のなかで、じッと耳をすました。

「お! 咲耶子、咲耶子の笛ではないか」

思わずつぶやいた時である。なにごとか、いきなりドンと駕籠がゆれかえった。

六

「ぶれい者、お供先に立ってはならぬ」

「あやしい女、ひッ捕えろ!」数人は、バラバラと前列のほうへかけあつまった。穴山の郎党たちは、たちまち、押しかぶさって、ひとりの少女をそこへねじふせた。

「しばらくお待ちくださいまし。わたくしは、けっしてあやしい者ではありませぬ。穴山梅雪さまのご通行を幸いに、お訴えもうしたいことがあるのです」

「だまれ、ご道中でさようなことは、聞きとどけないわ、帰れッ」

と、家来どものののしる声を聞いて、駕籠の扉をあけさせた梅雪は、