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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

「む、では寝床のわきの床板をはねあげてみよう」

と、忍剣が先にたって、蓆を巻き、板をはいでみるとたちまち、一間四方の間道の口が、奈落の門のごとく一同の目にうつった。

「おお、これこそ人穴城へ通じる間道にそういない」

「しめた! その方どもはこの口もとを護っていて、あやしい者が逃げまいったら、かならず捕りにがさぬように見張っておれ」

と、いいのこして、忍剣は禅杖をひっ抱え、小文治は槍の石突きをトンと下ろして、ともにまッ暗な間道のなかへとびこんでいった。

あとにのこった部下の者は、ひとしく間道口に目と耳を磨ぎすまして、いまに、なにかかわった物音がつたわってくるか、あやしいやつが飛びだしてくるかと、夜もすがら、ゆだんもなかった。

二

菊池半助を肩にかけて、まっ暗な人無村をかけていった蛾次郎は、やがて、おおきな荒屋敷の門へはいった。

見ると、そこが卜斎の細工小屋か、東のすみにぽッと明るい焔がみえて、トンカン、トンカン、槌と鉄敷のひびきがしている。そしてときどき、小屋のなかから白い煙とともに、シューッとふいごの火の粉がふきだしていた。

「親方、お客さまをつれてきた、旅のお侍さんで、けがをして難渋しているんだから、今夜とめてやっておくんなさい」