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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
「それに、もうひとりうしろにいて、だまってみていた公達がいたではありませんか」
「そうそう、藺笠をかぶっておりましたが、年は十五、六、スラリとして、観音さまがお武家になってきたようなおすがた」
「それそれ、あの人たちは、神か菩薩かの化身でしょうよ。まったく、悪いことはできないもので」
うわさはどこもかしこもであるが、その焦点の人々はあれからどこへいったろう?
紫野の芝原には、野天小屋がけの見世物が散在していた。おおくの人が、大がいそれへ目をうばわれているのをさいわいに、れいの若僧が、斧大九郎を小脇にひっかかえ、飛ぶがごとく駈けぬける――とあとから大股に、藺笠の公達と六部のすがたが、つづいていった。
「ここらでよかろう」
立ちどまったのは、舟岡山のすそ。
高からぬこの山にのぼるとすれば、西に愛宕や、衣笠の峰の影、東はとおく、加茂の松原ごしに、比叡をのぞんでいる。さらに北をあおぐと、竹童の故郷鞍馬山の翠巒が、よべば答えんばかりに近い。
「若君ここへおかけなさりませ」
たかだかとそびえた杉林の下――。
一つの切株の塵をはらって、六部はわきへ片膝をついた。
「…………」