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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

柄にまよった手は、いきなりふところにすべりこんだ。かれの指にふれたのは、竹生島神伝の火独楽! それであった。

それを、ふところにつかんで、いきなり、パッと立ちあがるや否、鞍馬の竹童、

「うぬッ」

と、独楽をまッこうにふりあげた。

ぶン! と、うなった火焔独楽。

たしかに呂宋兵衛のからだのどこかに、焔をあげて噛みついたにちがいない。あッと、相手の驚愕した声が竹童の耳にも聞きとれた。

だが、とたんに――。

独楽は竹童のふところに飛んでかえって、かれ自身もまた、アッ――と片手で顔をかくしたまま、あぶなくそこへたおれかかる。

見れば、えりもとから鬢の毛に、霜柱が植わったように、無数の針が指にさわった。

それにおどろいて身をひるがえすと、

「この餓鬼」

大きなこうもりにふさわしい黒衣の老女が、さッとすがって、うしろから竹童を抱きすくめ、

「呂宋兵衛さま! 呂宋兵衛さま」

と、しわがれた声で助勢をもとめる。

「お、そいつは、鞍馬の洟ッたらしだな」

「わしも、人無村や京都で二、三ど見たことがある。竹童というて、伊那丸の手さきになってあるく童じゃ」

「おのれ、野良犬のように、こんなところへなにしにウロウロしてきやがったか。