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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

信玄の再来

一

「わッ!」

と、大地へおちてきたのを見れば、目も鼻も口もわからない。満顔ただからくれないの一コの首。

信玄の再来

一

さても伊那丸は、小袖のうえに、黒皮の胴丸具足をつけ、そまつな籠手脛当、黒の陣笠をまぶかにかぶって、いま、馬上しずかに、雨ヶ岳をくだってくる。

世にめぐまれたときの君なれば、鍬がたの兜に、八幡座の星をかざし、緋おどしの鎧、黄金の太刀はなやかにかざるお身であるものを……と、つきしたがう、民部をはじめ、忍剣も小文治も蔦之助も、また咲耶子も、ともに、馬をすすめながら、思わず、ほろりと小袖をぬらす。

兵は、わずかに七十人。

みな、生きてかえる戦とは思わないので、張りつめた面色である。決死のひとみ、ものいわぬ口を、かたくむすんで、粛々、歩をそろえた。

まもなく、梵天台の平へくる。夜の帳はふかくおりて徳川方の陣地はすでに見えなくなったが、すぐ前面の人穴城には、魔獣の目のような、狭間の灯が、チラチラ見わたされた。その時、やおら、俎岩の上につっ立った軍師民部は、人穴城をゆびさして、

「こよいの敵は呂宋兵衛、うしろに、徳川勢があるとてひるむな――」

高らかに、全軍の気をひきしめて、さてまた、