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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

「――作事奉行、筒井伊賀守の家臣、猪飼八兵衛」

と大声で答える。

「門鑑」

「いやお送りでござる――徳川どののお使者」

「徳川家の使者? して何名」

「永井信濃守尚政と、つきそい両名」

「そのものは?」

「水野源五郎」

「ウム、徳川殿のお旗本でござるな。もう一名は」

「菊池半助」

「それだけでござるか」

「さよう」

「ごくろうでござッた」

案内の猪飼八兵衛はかけもどって、送りこまれた徳川家の家臣三名、槍ぶすまの間をとおってひかえ所に待たされた。

やがてそれを、秀吉のところへ知らせると、かれはもう心得ていて、福島市松に出迎えを命じる。

市松はガチャッ、ガチャッと歩くたびに陣太刀が具足をたたく音をさせながら、巨石でたたみあげた石段をおりてきて、

「遠路浜松城からおこしのお使者、ごくろうです。福島市松ご案内申しあげる。こちらへ」

うしろへ目くばせすると、かれが無二の家来可児才蔵、

「いざ」

と三名のうしろについて、主人と首尾をつつんで秀吉のいる本丸の庭手へあがっていった。

(はてな?)

そのとちゅうで可児才蔵は、自分の目のまえに立ってゆく、少しちぢれ毛のある男の襟もとを見つめながら、