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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
明暗の両童子
一
バサリと血のなかにおちたのは、胴から下、上半身は枝をつかんだまま、虚空にみにくく止っていた。
そのとき、あなた――今宮の舞楽殿では、笛や太鼓、そして鈴の音がゆるぎだした。やすらい踊りのどよめきにあわせて、神楽囃子がはじまったのであろう。――悪魔たいじの御神楽歌。
明暗の両童子
一
ピイヒャラ ドン助 ひゃらりこドン!
鷲をとられて オッぺけぺ!
竹童ドン助 ひゃらりこ ドン!
これは、あちらの神楽歌ではない。
暮れなんとする杉林から芝生のへんを、しきりに浮かれまわっている少年の放歌である。
はるかに聞える神楽にあわせて、
ピイヒャラ ドン助 ひゃらりこドン!
すっかりゆかいになっている。
右手に一本もっているのは、串へさしたお芋の田楽、左につかんでいるのは黒い飴ン棒、ひゃらりこドンと踊りながら、芋をたべては飴をなめ、飴をなめては芋をくい、かわりばんこに舌を楽しませて、
竹童ドン助 ひゃらりこドン!
いよいよ無上の大歓楽、歌もおどりもやむことを知らず、陽が暮れようとするのも知らず、いましも林をぬけてきた。
このお天気な少年は、いうまでもなく蛾次郎である。
きのうから遊びつづけて、きょうは、今宮祭の見物としゃれているのか。