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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

と、長安は不満な色をたたえた。

「いや、神籤よりは武道試合の日のできごと、やはり、武技をもって神慮に問うのが自然であろう」

「なるほど!」

忍剣は、よし、というふうにうなずいて、

「では、われわれと大久保家の臣と、武技をたたかわせたうえに、その勝ったるほうへ、咲耶子を渡してくださるというのですな」

「いかにも。石見守どの、ご賛否はいかが」

「ウム。よろしい!」

かれも、いさぎよく承知した。

が――すぐにあわてた調子で、

「イヤ待った、それには、条件がある」

「ふム、条件とは?」

「じしんが総奉行たり、重なる家臣が目付たる役目上、大久保家では、このたびの試合にいっさい何人もだしておらぬ。それゆえ、主君ご直参、浜松城の人々に、その代試合をいらいするが、その件、異存があるならしょうちできぬ」

「なに、徳川家直参のものに代試合をたのまれるとか、それは、願ってもないこと、当方に異存はない」

「では一火どの、かならず、違約なしという、神文血判をしてほしい」

「誓紙の支度は暇どるばかり、それよりも武門の金打、おうたがいあるな」

「お。では浪人ども、あちらの空部屋へさがって試合の用意をせい」