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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
四
ぐずぐずしていれば、丹羽昌仙の密使が、秀吉のところへついて、いかなる番狂わせが起ろうも知れず、四日とたてば、木隠龍太郎の吉左右もわかってくる。どっちにしても、ここ二、三日のうちに果心居士の命をはたさなければ、こんどこそ竹童、鞍馬山から追ンだされるにきまっている。
四
安土の山は焼け山だ。
安土の城も半分は焼けくずれている。
岩は赭くかわき、石垣はいぶり、樹木の葉は、みなカラカラ坊主になって黒い幹ばかりが立っていた。
その石段を、ぴょい、ぴょい、ぴょい。まるでりすのようなはやさでかけのぼっていったのは、竹ノ子笠に道中合羽をきて旅商人にばけた丹羽昌仙の密使、早足の燕作だ。
中途でちょっと小手をかざし、四方をながめまわして、
「ああ変るものだなあ。戦国の世の中ほど、有為転変のはやいものはない。どうだい、ついこの夏までは、右大臣織田信長の居城で、この山の緑のなかには、すばらしい金殿玉楼が見えてよ、金の鯱や七重のお天主が、日本中をおさえてるようにそびえていた安土城だ。それが、たった一日でこのありさま。おもえば明智光秀という野郎も、えらい魔火をだしやあがったものだなア……」