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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
五
さて。
余事はとにかく、いまの試合はいずれに軍配があげられるものだろうか?
むろん、検証役の鐘巻一火は、床几から立ちあがって、
「同点。忍法試合勝負なし!」
と、鉄扇をふるって、奉行目付へいったことである。
衆目、それに異議はなかった。
菊池半助は、勝負なしのものわかれに、無念そうな白眼を相手に投げ、そうほう、無言のままにらみわかれた。
「わーッ……」
と崩れたのはお小姓とんぼである。万千代をはじめ余一その他のもの、試合がおわると、いっせいにもとの幕うちへ、引きあげてゆく。
そして、遠雷のような群衆のどよめきが、あとしばらくのあいだ、空に消えなかった。
――と思うと、すでに二番試合の合図が、息もつかずとうとうと鳴りわたって、清新な緊張と、まえにもまさる厳粛な空気を、そこにシーンとすみかえらせてきた。
と見れば。
片肌をおとした凛々しいふたりの射手は、もう支度のできている場所に身がまえをつくって、弓懸をしめ、気息をただし、左手にあたえられた強弓を取って、合図、いまやと待ちうけている。
この遠矢くらべ、番えた矢よりほかに代矢のない、一本試合のだいじな競射である。