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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

四

「おそらく、三日目を待たず、今夕かぎりでめちゃめちゃになるだろう。おう、おまえも早くゆくがいい、そして、まんいちの用意に、これを証拠に持ちかえるがよかろう」

そういって、居士がかれにあたえたのは、さいぜん、燕作がどこかへ投げすてた額板だった。

蔦之助の遠矢がけっして敗れたのではないと聞かされて、小文治はこおどりして、

「では、ごめんを」

と、下山の道へ走りだした。

「おお、せくなよ。急いてあとの不覚をとるなよ」

見送りながら、居士は白鳥の奥の院のほうへ風のごとく立ち去った。

しばらくすると、草むらのなかから、

「ウーン……ア痛、アイテテテテ」

と腰をさすりながら起きあがった燕作が、夢のような顔をしてのこのこでてきた。

「どうしたんだろう? おれはいったい」

あたりをみると、いつか夕暮れらしい色が、森や草にはっていた。梢にすいてみえる空の色も、丹の刷毛でたたいたように、まだらな紅に染まっている。

「あッ……ささささ、さア、大へん!」

はじかれたように思いだして、大鳥居の上を見ると、南無三、そこに立っていた矢はすでにぬき取られてあるではないか。

「ちぇッ、出しぬかれたぞ、小文治のやつに」