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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
そしてやがて。
「独楽まわしのにせ者め」
「鷲をかえせ、鷲をかえせ」
声をそろえて、そこへ万千代たちのなだれてきたころには、すでに、地上に竹童のすがたもなく、大鷲の影もなかった。
ただ、あッ気にとられていた眼へ、ふとうつったものはちょうどそのとき野末をはなれた、大きな宵月の光に、なにやら知れぬものの影が、草の上をフワフワとさまよった――それだけであった。
おお、お小姓とんぼの坊ッちゃんたち!
三方ヶ原をあとにしながら下に月光の山川を見、あたりに銀鱗の雲を見ながら、鞍馬の竹童は鷲の上から叫ぶのである。
これはもともとおいらの鷲だ。
おいらのものはおいらに帰る。なんのふしぎもないはなしだ。蛾次郎みたいに、ぬすんで逃げるのとはわけがちがう。
独楽でだましたのは悪かったけれど、おとなしくクロを渡してくれといっても、かせといってたのんでも、浜松城の腕白坊ッちゃん、けっして、すなおには承知しないでしょう。だから、あんな詐術をやりました。
それも武田一党のため。ああ、しかも伊那丸さまの危難を知った日に、この鷲が、ふたたびじぶんの手にかえるとは、天がこの竹童をあわれんでか、果心居士さまのお護りであろうか。