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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

二

「竹童竹童、その泉の水を少々くんでこい」

「ハイ」

あっけにとられて見ていた竹童は、居士にいいつけられたまま、岩のあいだから、こんこんと湧きいでている泉をすくってきた。

「かわいそうにこの鷲は、片目を鉄砲で撃たれているため、だいぶ苦しがっている。はやくその霊泉で洗ってやるがよい。すぐなおる」

「ハイ」

竹童は草の葉ひとつかみを取ってひたし、いくたびか鷲の目を洗ってやった。大鷲は心地よげに竹童のなすがままにまかせていた。

「おまえの道案内はこの鷲だ。これに乗ってかける時は千里の旅も一日の暇じゃ、よいか」

「これに乗るんですか、お師匠さま、あぶないナ」

「たわけめが」

喝! と叱りつけた果心居士は、竹童がアッというまに襟くびをグッとよせて、

「エーッ」と一声、片手につかんでほうりなげた。ブーンと風を切った竹童のからだは、珠のごとく飛んで、はるかあなたの築山の上へいって、ヒョッコリ立ったが、たちまち、そこからかけもどってきてニコニコ笑いながら澄ましている。

「お師匠さま、またいたずらをなさいましたね」

「どうだ、どこかけがでもしたか」

「いいえ、そんな竹童ではございません。