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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
幕裏にひそむ妖術師
一
声をのんでひッそりとしずまりかえった場の内外は、無人のごとくどよみを沈めて、息づまるような空気をつくっていた。
すると、ひとり、矢来のそとの群衆のなかで、
「民部、こまったことになったものだの」
と、ささやいた人があった。
さいぜん、竹童が鷲につられて走ったのをきっかけに、とめるまもなく、一党のひとびとが矢来をこえてこういう事態をひきおこしたので、その成行きをあんじている武田伊那丸と小幡民部のふたりである。
民部も、あなたへ眼をはなたず、
「ただ、天祐を祈っているのほかございませぬ」
と、ことばすくなく答えた。
「お……いまとなっては、もう手をくだす術もない」
「若君」
民部は、しいて伊那丸の憂いをはげますようにいった。
「――おあんじなされますな、たとえ、いかなる波瀾を生みましょうとも、かれらのことでござります」
「うム……」
「かれらのことです、かれらのことでござります。けっして、汚名をさらすような結果を招きはいたしますまい」
そうはいったが、そういうかれじしんが、人しれず手に汗をにぎりしめているのであった。
――と、目をみはる間もなかった。
あまたの人の口から、あッ……と軽いこえがいちようにもらされたかと見ると、すでに、しぼりこまれた二弓はブンと弓がえりを打って、ひょうッと、弦をはなれた二すじの矢が、風を切っ