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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
「ゆうべは真っくらでわからない。いずれ毒水を呑んだろう、朝になったら念のために、生死をたしかめにいこうと思っていたところなので」
「なるほど、竹童を投げこんだのは、貴公でございましたな」
「ところがいま見るに、あの鷲が宙へつりあげた。それをもって見るに竹童め、わしが水の手へ投げこんだとたんに、杭か岩の角で脾腹をうち、気をうしなったにちがいない」
「ウ……ウム? ……」
「で、ついに、毒水を食らわなかった。水を食らえば体重は倍の上にもなるゆえ、けっして、いくら大鷲でもくわえて飛べたものじゃない」
「だが、あの谷間へ落ちていっては、五体みじんとなったでしょう」
「イヤイヤ、あそこは深い檜谷、何百年も斧を入れたことのない茂りだ。落ちても枝にかかるか深い灌木の上にきまっている」
「そりゃいかん!」
伊部熊蔵はにわかにあわてだした。そして、それッと、周囲の武士を指揮して、
「朝めしまえの一仕事に、竹童のからだをさがしだせ」
といいつけた。
「はッ」
というと鉄砲組の中から五、六人、足軽十四、五人、山掘夫四、五人――小頭の雁六も一しょについて、まだ朝露のふかい谷底へ降りていった。