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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

アア……どうもこまった因縁だの」

宮内は双方の顔を見くらべて、つくづくとこう嘆息した。

およそどんな者にでも、真心から熱い慈愛をそそぎこめば、まがれる竹もまっすぐになり、ねじけた心も矯めなおせると信じているかれだったが、竹童はとにかく、蛾次郎の横着と奸智と強情には、すっかり手を焼いてしまった。

こういう性質の不良なものでは、日本に天邪鬼という名があり、西洋にはキリストの弟子のうちに、ユダという男がいた。ユダの悪魔ぶりにはキリストも持てあましたし、十二使徒の人々も顰蹙して、あいつはとても、真人間にはなりませんといったくらいだ――という話を、宮内はいつか伴天連の説教にきいたことがあるので、蛾次郎もそれに近い人間かなと考えた。

「では、なんともいたしかたがない。いつまでおまえたちを、この竹生島へ鎖でつないでおくわけにもゆかぬから、明日はふたりをむこうの陸におくってあげよう」

とうとう宮内もあきらめてこういいわたした。

「まことに、永いあいだ、手あついお世話になりました」

竹童は尋常に礼をいったが、蛾次郎は、ヘン、お粥ばかり食わせておきやがって、大きな顔をしていやがる――といわんばかり、面と瘤をふくらましてそッぽを向いたままである。