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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
見ると、たけなす山葦と笹むらにかくれて、洞然たる深い横穴がある。
「これだ!」
と、熊蔵が、用意の松明を持たせて中にすすむと、清水にぬれて海獣の肌のようにヌルヌルした岩壁を、無数の沢蟹が走りまわったのに、ハッとした。
「雁六、この穴はどうだ?」
「掘ったものです。しかも、まだ新しく掘った穴にちがいありません」
「ウム、それじゃてっきり、山曲輪へ通じる間道だろう、先を一つさぐってみてくれ」
「合点です! オイ松明を持った野郎はさきに立て」
あとからあとからと、山葦をわけてザワザワと中へはいった。そして、奥へすすめば、すすむほど、土質の肌目があらく新しくなってくる。ところどころに、土をくりぬいた段があった。段をのぼると平地になり、平地をいくと段がきりこんである。
かくて、かなりの暗黒をうねっていくと、やがてゆきどまりの岸壁にぶつかった。あらかじめこうあることとは、石見守からもいわれてきた熊蔵、
「それッ」
というと、山ほりたち、合点といっせいに腰の槌をひきぬいて、金脈だ金脈だ! 家康公から恩賞のでる金脈だとばかり、たちまちそこを掘りぬけた。
荒鉱を掘ることを思えば、なんの造作もないひと仕事。