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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
魔人隠形の印
一
かくて一同は、敵の目をふさぐ用意に、ばたばたとかがり火を消し、太刀の音をひそませ、箭づくり、刃のしらべはいうまでもなく、馬に草をも飼って、時刻のいたるをまちわびている。
待つほどに更くるほどに、夜はやがて三更、玲瓏とさえかえった空には、微小星の一粒までのこりなく研ぎすまされ、ただ見る、三千丈の銀河が、ななめに夜の富士を越えて見える。
「グウー、グウ、グウーグウ……」
そのなかで、竹童ばかりが、鷲の翼をはねぶとんにして、さもいい気もちそうに、いびきをかいて寝こんでいた。
魔人隠形の印
一
まさに、夜は子の刻の一天。
人穴の殿堂をまもる、三つの洞門が、ギギーイとあいた。
と、そのなかから、焔々と燃えつつながれだしてきたのは、半町もつづくまっ赤な焔の行列。無数の松明。その影にうごめく、野武士、馬、槍、十字架、旗、すべて血のように染まって見えた。
なかでも、一丈あまりな白木の十字架は、八人の手下にゆらゆらとささえられ、すぐそばに呂宋兵衛が、南蛮錦の陣羽織に身をつつみ、白馬にまたがり、十二鉄騎にまもられながら、妖々と、裾野の露をはらっていく。
すすむこと二、三里、ひろい平野のまン中へでた。