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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

二

武田伊那丸、小幡民部、そのほか帷幕のものが、いまなお白旗に陣をしいて、しきりにあせっているわけは、和田呂宋兵衛の所在が、かいもく知れないためであった。

人穴城という外廓は焼けおちたが、中身の魔人どもはのこらず逃亡してしまった。丹羽昌仙、吹針の蚕婆、穴山残党の佐分利、足助の輩にいたるまで、みな間道から抜けだした形跡。しかも、落ちていったさきが不明とあっては、真に、この一戦の痛恨事である。

「そこできょうも、咲耶子さまをはじめ忍剣もわれわれ三名も、八ぽうに馬をとばし、木の根、草の根をわけてさがしているところだ」

――と龍太郎からはなされた竹童は、聞くとともに、こともなげにのみこんで、

「では龍太郎さま、この竹童が、ちょっと、一鞭あてて見てまいりましょう」

「ウム、なにかおまえに、成算があるか」

「あてはございませんが、そのくらいのことなら、なんのぞうさもないこッてす」

「いや、あいかわらず小気味のいいやつ、ではわかりしだいにその場所から、この狼煙を三どうちあげてくれ、こちらでも、その用意をして待つことにいたしているから」

「ハイ。きっとお合図もうします。じゃ蔦之助さま、小文治さま、これでごめんこうむりますよ」