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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
早足の燕作
一
「差せるさ」
「差したい! きッと差してみせるぞ」
竹童は、その興奮で立ちあがった。
しかし、かれのひきうけた大役とはいったいなんだろう。もとより鞍馬山霊の気をうけたような怪童子、あやぶむことはあるまいが、居士の口吻からさっしても、ことなかなか容易ではないらしい。
早足の燕作
一
夜もすがら、百八ヵ所で焚きあかしているかがり火のため、人穴城の殿堂は、さながら、地獄の祭のように赤い。
和田呂宋兵衛たちが、おおきな十字架をささげて、層雲くずれの祈祷にでていったあとは、腹心の轟又八が軍奉行の格になって、伊那丸と咲耶子をうつべき、明日の作戦に忙殺されていた。
「東の空がしらみだしたら一番貝、勢ぞろいの用意とおもえ。富士川が見えだしたら、二番貝で部署につき、三番貝はおれがふく。同時に、八方から裾野へくだって、時刻時刻の合図とともに、遠巻きの輪をちぢめて、ひとりあまさず討ってとる計略。かならずこの手はずをわすれるなよ」
一同へ軍令をおわった轟又八は、やや得意ないろで広場にたち、あすの天候を観測するらしいていで、暗天を見あげていたが、ふと、なにがしゃくにさわったのか、