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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
石投げの名人
一
そこは、釜無川の下、富士川の上、蘆山の河原に近いところである。燕作は、思いのほかすばしッこい竹童をもてあまして、手捕りにすることをだんねんした。そのかわり、かれはにわかにすごい殺気を眉間にみなぎらせ、
「めんどうくせえ、いッそ首にして呂宋兵衛さまへお供えするから覚悟をしろ」とわめいた。
ひきぬいたのは、二尺四寸の道中差、竹童はぎょッとしてはね返った。とすぐに、するどい太刀風がかれの耳たぶから鼻ばしらのへんをブーンとかすった。
哀れ竹童、組打ちならまだしも、駈け競べならまだしものこと――真剣の白刃交ぜをするには、悲しいかな、まだそれだけの骨組もできていず、剣をとっての技もなし、第一、腰に差してる刀というのが、頼みすくない樫の棒切れだ。
石投げの名人
一
秋の水がつめたくなって、鮠も山魚もいなくなったいまじぶん、なにを釣る気か、ひとりの少年が、蘆川の瀞にむかって、釣り糸をたれていた。
少年、年のころは十五、六。
すこし低能な顔だちだが、目だけはずるく光っている。鳥の巣みたいな髪の毛をわらでむすび、まッ黒によごれた山袴をはいて、腰には鞘のこわれを、あけびの蔓でまいた山刀一本さしていた。