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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

「ものものしい庭の手のそうどう、ありゃなにごとじゃ、夜討ちか?」

「いや、お案じなされますな、それほどな人数とも思われませぬ」

「領主の城郭へ押しかける盗賊もあるまい。では、何者が乱入したのじゃ」

「よくは目的がわかりませぬが、ことによると、源氏閣に監禁しておく女を、救いだしにきた命知らずであるやも知れませぬ」

「咲耶子をうばい返しに? ウム、しゃらくさいやつめら! 浜松城へ護送するまでは大事な擒人、かならずぬかりがあってはならぬぞ」

「はッ」

「伊部熊蔵や宿直の者はどうした」

「ご寝所に近づけては申しわけがないと、みな、この外側をかためております。なかにも伊部熊蔵は、腕のすぐれた若侍を選り、いちはやく白壁門へまいって斬りふせいでおりますから、追ッつけ四十や五十人の浮浪人ども、みなごろしにしてもどるでございましょう」

「そうか、しかしかんじんな、源氏閣の方は?」

「それはすぐこのご本殿の階上、三層までの階段をみな取りはずしてございますうえに、あの池のほうにも、侍を伏せておきましたゆえ、これまた、ご安心でござります」

周到な老臣が、臨機神速な手くばりに、石見守が寝ざめの驚愕もやや鎮まって、ほッと、そこで胸をなでおろしたかと思うと、何者であろうか、大廂のそとがわからクルリと身軽にかげをかすめて、廊下の切り欄間へしのびこんだあやしき