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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

あのここな慾張り小僧

一

「おおせ、ごもっともです。では方々、呂宋兵衛をこの三重へひっ立てて、かならず妖術などで逃げ失せぬように厳重なご用意あるよう」

「はッ、しょうちいたした」

「立てッ!」

と、呂宋兵衛を引ったてた四勇士は、多宝塔三重のいただきまで追いあげて、その一室の丸柱に鎖をもって厳重にしばりつけ、二階三階の梯子まではずした上、扉の口々はそとから鉄錠をおろしてしまった。

あのここな慾張り小僧

一

水車は、夜もすがらふだんの諧音をたてて、いつか、孟宗藪の葉もれに、さえた紺色の夜があけていた。

燕作の拇指で、息の根をとめられた鞍馬の竹童は、いぜんとして、水車小屋のうら崖に、ダラリとなったまま木の根にからんであおむけざまに倒れている――

とはいえ、まだ幽明の境にあって、まったく死んでしまったわけではないので、いくぶん、温みがあるが、笹の小枝からはいうつった小さな白蛇は、かれの体温へこころよげにそって、腕から喉へ、銀の輪となって巻きついたきり、去りもやらず、害をくわえるようすもない。

おりから、法師野の空にあって、三鼓七流の陣鐘が鳴りわたるを合図に、天地にとどろくばかりな勝鬨の声があがった。