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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

「あッ」

と、櫓の三方へ身をさけた。

とたんに、空から降ってきた怪火のかたまりが、音をたててそこにくだけたのである。

たおれた壺の酒が、望楼の上からザッとこぼれ、花火のような火の粉がまい散った。

「ふしぎ――どこから落ちてきたのであろう」

「昌仙昌仙、早くふみ消さぬと望楼へ燃えうつる」

「お、こりゃ松明じゃ」

「え、松明?」

三人は唖然とした。

いくら天変地異でも、空から火のついた松明が降ってくるはずはない、あろう道理はないのである。もし、あるとすれば世のなかにこれほどぶっそうな話はない。

しかし、事実はどこまでも事実で、瞬間ののち、またもや同じような怪焔が、こんどは籾蔵へおち、つづいて外廓、獣油小屋など、よりによって危険なところへばかり落ちてくる。

「火が降る、火が降る」

「それ、あすこへついた」

「そこのをふみ消せ、ふしぎだ、ふしぎだ」

城中のさわぎは鼎のわくようである。ある者は屋根にのぼり、ある者は水をはこんでいる。

なかでも、気転のきいたものがあって、闇使いの龕燈をあつめ、十四、五人が一ところによって、明かりを空へむけてみた結果、はじめて、そこに、おどろくべき敵のあることを知った。