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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

「では、果心先生から、この呂宋兵衛へのお使いでござるか」

「そうです。さて、お師匠さまのお伝えというのは、きょうなにげなく鞍馬から富士のあたりをみましたところ、いちまつの殺気が立ちのぼって、ただならぬ戦雲のきざしが歴々とござりました。あらふしぎ、いま天下信長公の亡きのちは、西に秀吉、東に徳川、北条、北国に柴田、滝川、佐々、前田のともがらあって、たがいに、中原を狙うといえども、いずれも満を持してはなたぬ今日、そも何者がうごくのであろうかと、ご承知でもござりましょうが、先生、ご秘蔵の亀卜をカラリと投げて占われました」

「オオ」

呂宋兵衛はもとより、なみいる猛者どもも、この奇童のよどみなき弁によわされてしわぶきすらたてず、ひろき殿堂は、人なきようにシーンと静まりかえってしまった。

三

竹童は、ここでいささか得意気に、ちいさな体をちょこなんとかしこまらせ、両肱をはって、ことばをつぐ。

「お師匠さまがつらつら亀卜の卦面を案じまするに、すなわち、――富岳ニ鳳雛生マレ、五湖ニ狂風生ジ、喬木十悪ノ罪ヲ抱イテ雷ニ裂カル――とござりましたそうです」

「なになに? 喬木、雷に裂かると易にでたか」