轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

密林の出来事

一

不敵ないびきの声がする。

つかれた旅人でも寝ているのであろう、白旗の宮の、蜘蛛の巣だらけな狐格子のなかから、そのいびきはもれているのだ。

旅人なら、夕陽の光がまだ、雲間にあるいまのうちに早くどこか、人里までたどり着いておしまいなさい――と願わずにいられない。

この地方は、冬にならぬころから、口のひっ裂けた、れいの狼というのが、よく出現して、たびの人を、骨だけにしてしまう。

するとあんのじょう、森のかげから、ガサガサという異様な音がちかづいてきた。みると、それは幸いにして狼ではなかったが、針金頭巾や小具足で、甲虫みたいに身をかためたふたりの兵。手には短槍を引っさげている。

服装の目印、どうやら徳川家の斥候らしいが、きょう、天子ヶ岳に着陣したばかりなのに、はやくもこのへんまで斥候の手がまわってきたとはさすが、海道一の三河勢、ぬけ目のないすばやさである。

斥候の甲虫は、一歩一歩、あたりに気をくばって、落葉をふむ足音もしのびやかにきたが、

「しッ……」

と、さきのひとりが、白旗の宮のそばで、うしろの者へ手あいずする。

「なんだ……」

おなじく、ひくい声でききかえした。