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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

独楽だまし

一

浜松城のお小姓であれば、しかるべき家柄の息子たちにはちがいないが、城下からこんなところまで、鷲と取っくんできたのだからたまらない、とんぼぢらしのおそろいの小袖も、カギ裂きやら泥だらけ。

なかには、手や頬ッぺたをすりむいて、ざくろみたいになっている者、鼻血をだしておさえている者、髷の草ッ葉がとれないでこまっているもの、脇差の鞘だけさしてすましているもの。――どれもこれも弟たりがたく兄たりがたき腕白顔だ。さだめし、屋敷へかえったのちには、母者人からお小言であろう。

お山の大将おれひとり――という格で、中にまじっている徳川万千代は、みんなと一しょに、つなぎ止めた大鷲を取りまきながら、

「やあ、金光りの眼で、ギョロギョロとにらんでいるわ。怒るなおこるな、いまに餌をやるからな。余一、余一、さっきの餌を持ってこい」

と、鞭をあげてさしまねいた。

「はい」

というと、とんぼ組の中でも一番チビなお小姓余一、にわとりの死んだのを、竹のさきにかけて、万千代の手へ渡した。

「おお、鷲のごちそう」

と一同にみせて、笑わせながら、万千代はそれを猛禽の鼻ッ先へ持っていった。そして、くちばしのそばへぶらぶらさせたが鷲は横をむいて、その匂いすらかごうとしない。