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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

なるほど、往来をみていると、宿をとれずにかけあっている田舎武士や、酒気をおびている町人や、連れをよんでいる百姓や、えッさえッさと早駕で、おくればせに遠地から馳けつけてくる試合の参加者。

そうかと思うと、鮨売りの声やもろこし団子や味噌田楽の食い物屋、悠長に尺八をながしてあるく虚無僧があるかと思えば、鄙びた楽器をかき鳴らしてゆく旅芸人の笠のむれ――。

なかでも一ばん売れているのは四ツ辻の松明売りだ。

「夜があけてから山をのぼってゆくようじゃ、とてもいい場所で見物はできないぞ」

というので、気のはやい連中が十七文の松明をふりたて、その晩のうちからドンドンドンドン御岳の山へかかってゆく。

それが麓から見ると、狐火のように美しい。

「ウーム、どうでい、ありゃあ。まるで大文字山の火祭のようだな」

この男、京都にいたことがあるとみえて、旗亭の二階から首をだして、そのながめを大文字山の火祭に見立てた。

だれかと思うと、早足の燕作だ。

と――燕作、

「おッ、連中がやってきた」

と、そこから店の軒下をのぞいて、あわてて首を引っこめたが、次の部屋へヒョイときて、

「お頭。きましたぜ、おそろいで」