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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
三
「無念」
一代の軍師、小幡民部も、腕の勝負ではいかんともすることができない。はねおきようとすると、はやくも、呂宋兵衛の山のような体がのしかかってきて、グイとのどわをしめつけ、
「おウ、てめえが伊那丸の腰について、穴山梅雪を討ったという小ざかしい小幡民部というやつだな。こりゃいい首にめぐり会った。山荘へのみやげにしてやる。覚悟をしろ」
鎧通しをひきぬき、逆手にもって、グイと民部の首根にせまった。民部は、そうはさせまいと、下から短剣をぬき、足をもがき、ここ一髪のあらそいとなって、たがいに必死。
伊那丸も咲耶子も、みすみすかたわらにありながら、いまの雷火にふかれて、ふたりとも気を失ってしまっている。
「うーむッ」
もみ合っているふたりのあいだから、おそろしい苦鳴があがった。さては、民部が首をかき落とされたか、呂宋兵衛が脾腹をえぐられたか、どッちか一つ。
三
さきにはね起きたのは、呂宋兵衛であった。
かれの左の足に、一本の流れ矢がつき刺さっていた。つづいて民部も飛びおきた。またすさまじい短剣と短剣の斬りあいになる。
「やッ、呂宋兵衛、ここにおったか」
そのとき、ゆくりなくもきあわせた巽小文治が、朱柄の槍をしごいて、横から突っこんだ。