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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
四
「む、いかにも褒美をつかわそう、これ、用意してきた黄金をここへ持て」
と、家臣にになわせてきた三箱の金をそこへ積ませると、
「さすがは大名、これだけの黄金をそくざに持ってきたのはえらいものだ」
と、ニタリ笑つぼに入った。
「やい野郎ども、はやくこの黄金を軽舸へ運んでいけ。どりゃ、用がすんだら引きあげようか」
と手下にそれをかつがせて、龍巻も立とうとすると、
「やッ、大へんだ、おかしら、少ウしお待ちなさい」
と民蔵がことさら大きな声で、出足をとめた。
「なんでえ、やかましい」
龍巻は、舌うちをしてふりかえった。社の廻廊にたって、小手をかざしていた民蔵は、なおぎょうさんにとびあがって、
「一大事一大事! おかしら、沖の親船が焼ける! あれあれ、親船が燃えあがってる!」
と、手をふりまわした。
四
「なにッ、親船が?」
龍巻も、さすがにギョッとして、浜辺のほうをすかしてみると、まッ暗な沖合にあたって、ボウと明るんできたのは、いかにも船火事らしい。
「ややややや」龍巻の目はいようにかがやく。
見るまに沖の明るみは一団の火の玉となって、金粉のごとき火の粉を空にふきあげた。