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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

こなたより奉行所へ密告したため、アレ見よ、沖でも、この通りなさわぎをしているわい……小きみよい悪党ばらの最後じゃ」

穴山梅雪は、帰館すべくふたたびまえの駒にのって、持ってきた黄金をも取りかえし、武田伊那丸をも手に入れて、得々と社頭から列をくりだした。

「手はじめの御奉公、首尾よくまいって、民蔵めも面目至極です。殿のご運をおよろこびもうしあげます」

「ういやつだ。こよいから余の近侍にとり立ててくれる。伊那丸の縄をとって、ついてこい」

いっぽう、捕手にかこまれて、引ッ立てられた龍巻は、この態をみると、あたりの者をはねとばして、形相すごく、民蔵のそばへかけよった。

「畜生。う、うぬはよくも、おれを裏切りやがったな。一どは、縄にかかっても、このまま、獄門台に命を落とすような龍巻じゃねえぞ。きっとまたあばれだして、きさまの首をひンねじる日があるからおぼえていろ!」

「おお、心得た。だが、拙者は腕力は弱いから、その時には、また今夜のように、智慧くらべで戦おうわい」

久しぶりに、小幡民部らしい口調でこたえた民蔵は、子供の悪たれでも聞きながすように笑って、他の武士たちと同列に、梅雪の館へついていった。